
「話し方」より「聞き方」こそ、人間関係を変える最短ルート。聞くだけで、周りの人が変わり始めます。
人間関係で悩んでいたころ、「もっと上手く話せればいい」とずっと思っていました。コミュニケーション本を読んでは、話す技術ばかりを磨こうとしていたのです。
ところが、この本を読んで気づいたのは、まったく逆のことでした。人間関係のカギは「話し方」ではなく「聞き方」にある。それも、ただ内容を聞くのではなく、話の奥にある「感情」を受け取ることが大切なのです。
通勤電車のなかでiPad miniをひらき、読み進めるほどに「これだ」という気づきが続きました。言葉ではなく感情を聞く。安心感を意識してつくる。「でも」という言葉を控える。どれも今日からすぐ実践できる内容ばかり。
この記事では、本書から得た10の学びと実践のポイントをまとめています。読書が苦手な方でも手軽に読めるよう、要点を絞って解説しました。
| 書名 | 人は聞き方が9割 |
| 著者 | 永松茂久 |
| 発売日 | 2021年12月 |
| 出版社 | すばる舎 |
| ページ数 | 240ページ |
| 読了日 | 2025年12月 |
※本ページの書籍情報は出版社の公式情報をもとに記載しています。
【こんな人におすすめ】永松茂久『人は聞き方が9割』

「うまく話せない」と悩んでいる人ほど、読んでほしい一冊
コミュニケーションが苦手だと感じる人の多くは、「話す力が足りない」と思っています。どんな話をすればいいか、どう盛り上げればいいか、頭を悩ませがちです。
しかし本書が伝えるのは、話すより聞く方がはるかに重要だという事実。語彙力も話術も関係ない。聞く姿勢さえ整えれば、相手から「また話したい」と思われる存在になれます。
話す力に自信がない人ほど、実は聞く力を伸ばす余地が大きい。本書はそのことを丁寧に、具体的に教えてくれます。
職場や家庭の人間関係がなんとなくしんどいと感じている人
「なんとなく人間関係がうまくいっていない」という感覚は、原因がわかりにくいだけに厄介です。特定の問題があるわけではないのに、なぜかコミュニケーションが噛み合わない。そんな状態が続くと、職場にいるだけで疲れてしまいます。
本書では、人間関係がうまくいかない原因のひとつとして「安心感のなさ」を挙げています。相手に安心感を与えられていないと、どれだけ言葉を尽くしても心は開かれません。
聞き方を変えることで、自分が変わるより先に、周りとの関係が変わり始める。そんな実感が得られる一冊です。
部下や後輩との関係に悩んでいるリーダー・管理職
リーダーになると、つい「正しい方向を示さなければ」と話すことが増えます。ミーティングでも、自分の考えを伝えることに力を注ぎがちです。
しかし、部下が本当に求めているのは「話を聞いてもらえる安心感」かもしれません。指示や解決策ではなく、まず「聞いてくれる上司」であることが、チームの雰囲気を変えます。
本書には、立場が上の人が聞き手に回ることで得られる信頼の話が随所に出てきます。マネジメントに迷いがあるリーダーにとって、視点を変えるきっかけになる内容です。
コミュニケーションに苦手意識があり、自信が持てない人
「自分はコミュニケーションが苦手」という思い込みは、多くの場合「話すこと」への苦手意識からきています。うまい話ができない、会話を盛り上げられない。そんな焦りが積み重なって、自信を失ってしまう。
でも本書は、「聞くことに語彙力はいらない」と断言します。話さなくていい。相手の話を受け止めるだけでいい。その姿勢が、コミュニケーションの苦手意識を和らげるヒントになります。
聞き方を磨くことは、話すプレッシャーを下げることでもあります。苦手意識のある人が、まず手に取るべき一冊といえます。
本をあまり読まない忙しい社会人にも、すぐ読める
240ページとコンパクトで、文章も平易。難しい専門用語はほとんどなく、著者の体験談や具体例が豊富なので、読書が苦手な方でもすらすら読み進められます。
私は通勤電車のなかでiPad miniを使って少しずつ読んでいましたが、数日で読み終えました。移動中や休憩時間にさっと読むのにも、ちょうどいいボリューム感です。
「本を読む時間がない」「長い本は続かない」という方にとっても、取り組みやすい一冊。学びを行動に移しやすいシンプルな構成も魅力です。
【10の学び】人は聞き方が9割|今日から実践できる聞き方のコツ

① 「言葉」ではなく「感情」を聞けば、相手の心が開く
「話を聞いている」という人の多くは、言葉の内容を聞いています。何があったか、どんな問題が起きたか。情報として正確に把握しようとする。
でも「話を聞いてほしい」と感じる人が求めているのは、そこではありません。話の奥にある「感情」を受け取ってほしいのです。なぜ辛いのか、何が悲しいのか。その感情に気づいてほしい。
以前の私は、相手の言葉を情報として整理しながら聞いていました。内容はメモできても、相手がなぜか話しづらそうにしていた。気づいたのは、感情ではなく情報だけを拾っていたこと。
「なぜそれが辛いのか」を感じながら聞くだけで、会話の質がまったく変わります。言葉の背景にある感情を意識する。それだけで、相手は「ちゃんとわかってもらえた」と感じてくれるのです。
② 聞く側こそが、会話の主導権を握っている
「話す人が会話をリードしている」と思いがちです。でも本書は、それは逆だと言います。本当の意味で会話を動かしているのは、話させる側、つまり聞いている人なのです。
人は生まれながらに「話したい生き物」。相手が話したいことを引き出せる人こそが、会話の舵を握っています。聞き手の反応次第で、会話は広がりもするし、止まりもする。
「うまく話せない」と焦って話し続けるより、相手が話したくなる空間をつくる方が、コミュニケーションははるかにうまくいく。聞くことに徹するのは受け身ではなく、積極的な関わり方です。
③ 「否定のない安心感」を意図的につくる
どんなに話したいことがあっても、否定されそうな雰囲気があれば人は口を閉ざします。逆に「ここでは何を言っても大丈夫」という空間があれば、相手は自然と話してくれます。
安心感をつくるのに、特別なスキルは必要ありません。「間違っている」ではなく「自分とは違う」と捉える。相手を否定しない。それだけで、空間の雰囲気はがらりと変わります。
職場の1on1でも、家族との会話でも、友人との雑談でも同じ。否定されないとわかった瞬間、人は普段言えないことを話し始めます。安心感は、聞く力の土台となるものです。
④ うなずきは「言葉」より雄弁に共感を伝える
うなずきは単なるリアクションではありません。タイミング・大きさ・速度が、共感の深さを伝えます。著者はうなずきを「オーケストラの指揮者の棒」と表現しています。
相手が嬉しそうな話をしているときは大きく元気よく頷く。深刻な話のときは、静かにゆっくりと頷く。感情に表情を合わせながら頷くことで、相手は「ちゃんと聞いてもらえている」と感じます。
眉間に意識を集中させると表情が引き締まり、真剣に聞いている印象を与えられる。笑顔のときは眉間を開く。この小さな意識だけで、うなずきの力が大きく変わります。
⑤ 「好かれること」より「嫌われないこと」が先決
初対面や関係の浅い相手に、よい印象を与えようと頑張って話す人は多い。でも相手がまだ警戒しているうちは、どれだけ言葉を尽くしても心は開かれません。
まず必要なのは「この人は安心できる」と思ってもらうこと。好かれようとするのは、その次の話です。否定しない、マウントをとらない、解決策を押しつけない。この「やらないこと」を決めるだけで、相手の不安は自然と和らぎます。
「北風と太陽」の寓話と同じです。力でこじ開けようとするより、温かく包み込む方が、相手の心はずっと早くひらく。まず嫌われないこと。シンプルですが、これが人間関係の大前提です。
⑥ 悩みに「解決策」を安易に押しつけない
誰かが悩みを打ち明けてきたとき、「こうすれば解決するよ」とすぐ答えたくなるのは自然なことです。でも多くの場合、相手が求めているのは解決策ではありません。「気持ちをわかってほしい」という思いが先にある。
以前の私も、同僚や部下の相談に「それならこうすればいい」とすぐ答えていました。内容は正しくても、相手の顔が晴れないことが多かった。気づいたのは、答えを求められる前に答えを出していたこと。
「どうなったら嬉しい?」とひと言聞くだけで、会話の雰囲気がまったく変わります。人は他人の答えより、自分で出した答えにこそ納得するもの。まず感情を受け取る。解決策はその後です。
⑦ ネガティブな接続詞「でも」を意識して控える
「でも」「しかし」「いや」は、相手の言葉を否定するシグナルとして受け取られやすい言葉です。内容が正しくても、「でも」から返すと相手は反発を感じてしまいます。
本書を読んでから、自分がいかに「でも」を多用していたかに気づきました。職場の会議でも家族との会話でも、無意識に連発していた。それだけで、会話が対立モードに入っていたのかもしれません。
「なるほど、確かに」「そういう考え方もあるね」に切り替えるだけで、会話の流れが穏やかになります。「でも」を控えることは、小さな言葉の変化に見えて、人間関係に大きな違いをもたらします。
⑧ 「質問」より「気持ちを伝える」方が、相手の心が開く
相手が遅刻してきたとき、「なぜ遅れたの?」と聞けば事情聴取のような空気になります。でも「遅かったね、心配したよ」と気持ちを伝えると、相手は自然と事情を話してくれます。
人は詰問されると心を閉ざし、気持ちを受け取ると心をひらく。この心理は、職場での1on1でも、家族や友人との会話でも変わりません。
「私で相談に乗れることがあれば言ってね」「こうしてもらえると嬉しい」という形で気持ちを置いておくと、相手は責められた感覚を持たずに話し合えます。事情聴取をするほど、相手の心は閉ざされていきます。
⑨ 話を聞きながらメモを取る習慣が、信頼を積み上げる
話を聞きながらメモを取る。たったそれだけで、相手への敬意と関心が伝わります。「そんなことメモしなくていいよ」と言いながら、一生懸命話してくれる人がいる。それはメモが「あなたの話を大切にしています」というメッセージになるからです。
この習慣を実践してから、先輩や上司との関係が明らかに変わった実感があります。重要な場面でノートをひらくだけで、会話の深さと信頼感が違います。
年長者だけでなく、上司でも部下でも同じ。誰もが「自分の話が大切にされている」と感じたい。メモを取るという行動は、その気持ちに応える最もシンプルな方法です。
⑩ 秘密は「自分のところで止める」と決める
人は自分だけで抱えきれない悩みを持つと、誰かに話したくなります。それは悪いことではありません。でも聞く側に回ったとき、その話を自分のところで止める覚悟が必要です。
「あの人がこう言っていた」と話が広がった瞬間、信頼は壊れます。話してくれた相手との関係だけでなく、「この人に話しても大丈夫か」という評価にも直結します。
秘密を守ることは義務ではなく、聞ける人であるための土台。「自分のところで止める」と決めて聞くと、話してくれる人が増え、相手の信頼が自然と積み上がっていきます。聞く力の価値は、こういうところにも現れます。
【評価】永松茂久『人は聞き方が9割』
| 総合評価 | ★★★★☆(4/5) |
| 読みやすさ | ★★★★★(5/5) |
| 実用性 | ★★★★☆(4/5) |
| 内容の深さ | ★★★☆☆(3/5) |
1〜2時間で読み終えられるほど読みやすく、著者の体験談と具体例が豊富です。「今日からすぐ実践できる」内容ばかりで、本をあまり読まない方にも入りやすい一冊。心理学的な根拠や理論的な深みを求める方には物足りないかもしれませんが、まず行動を変えるきっかけとしては、十分すぎるほどの価値があります。
【まとめ】聞き方を変えると、人間関係が変わる

本書を通して一番感じたのは、聞くことの「持つ力」の大きさです。話さなくていい。うまく伝えられなくてもいい。ただ、相手の感情を受け取ろうとする姿勢が、人間関係を変えていく。
10の学びをまとめると、すべてに共通するのは「安心感を与えること」です。否定しない、解決策を押しつけない、「でも」を控える。これらは全部、相手が安心して話せる空間をつくるための行動です。
特に実践してみてほしいのは、まず「でも」を「なるほど」に変えること、そして話しながらメモを取ること。小さな変化ですが、周りの反応が変わり始めます。
著者は本書の最後で、「聞くことで人の孤独を照らす一筋の光になれる」と書いています。聞き方を磨くことは、自分のためだけでなく、周りにいる誰かのためにもなる。そう気づかせてくれた一冊でした。
コミュニケーションに少しでも悩みがある方は、ぜひ手に取ってみてください。
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【著者】永松茂久さんのその他書籍についてご紹介
永松茂久さんは、人間関係・コミュニケーション・人生哲学をテーマにした著書を多数書かれています。当ブログでも2冊をご紹介しています。
人は話し方が9割
「聞き方」と対になる「話し方」の本。話し方のテクニックではなく、相手に安心感を与える話し方の心構えを解説しています。本書と合わせて読むことで、コミュニケーション全体の理解が深まります。


